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「痛いの痛いの飛んでいけ」にはじつは化学的根拠があった?!【急性痛と慢性痛のちがいについて解説】

「痛み」という言葉で一括りにされがちですが、実は痛みには大きな違いがあります。

それが、急性痛と慢性痛です。

急性痛と慢性痛、どちらも「痛み」ではありますが、中身はまるで違うんです。

これを、牛肉のハンバーグと豆腐ハンバーグで考えてみましょう

両方ともハンバーグということは同じですが、豆腐と牛肉で中身はまるで変わってきます

つまり、いたみも「痛い」という共通点があるけれど、中身はまったく異なるのです。

急性痛も慢性痛も、その特性を理解して適切な対処をすることが大切なのです

慢性痛と急性痛の見分け方

急性痛

期間:
突如としてやってくる痛み。それが急性痛です。原因はほぼ一目りょう然。

急に始まり、比較的短期間で起こるものです。急性痛は、具体的な原因がはっきりしていることが多いです。例えば、切り傷やケガ、突き指などが含まれます。また、ぎっくり腰のように、急激な激痛が発生した場合も急性痛と言えます。

痛みの性質:
急性痛はにはするどい痛みがあります。これを音で例えると、「キュン」「キリキリ」「ピキッ」「ギュン」といったシャープな痛みです。

慢性痛

期間:
3ヶ月以上もずっと続く痛みがあります

原因がはっきりしない肩こり、腰痛、関節痛などが含まれます。また、急性痛が長期間続いて慢性的になる場合もあります。例えば、腱鞘炎のような病状が挙げられます。

痛みの性質:
慢性痛は持続的でにぶい痛みを特徴とします。これを音で例えると、「ジンジン」「ズーンズーン」「ずっしり」といったうずくような痛みです。

まとめると、

急性痛は急激でするどい痛みが短期間に起こるものであり、原因がはっきりしています。

対照的に、慢性痛は3ヶ月以上つづく持続的でにぶい痛みで、原因がはっきりしないことが多いです。

冷やす?温める?どっちが正解

急性痛:ひやす

慢性痛:あっためる

です。

そのため急性痛の場合は血行を良くする行為はNG。マッサージはだめです

例えば指を切って怪我をしてしまった場合や火傷をしてしまった場合にマッサージして血行を良くしようとは思わないですよね

もしそんなことをしたら血がドバドバ流れてしまいますし、火傷を温めたら余計はれ上がりひどくなりますね考えただけで痛いです

傷口をあたためることで余計にひどくなることは例え小学生でも想像できるでしょう

って、確かに当たり前なことです。

でも、実際には判断に迷いやすいこともあるんです。

例えば、ぎっくり腰の場合。ぎっくり腰は急に痛くなる症状がある急性痛に分類されます。そのため、冷やすことが大切になってきます。

そして慢性痛の場合についてですが、これは慢性痛の原理から解説できればと思います

慢性痛は急性痛と比べ複雑といわれますが、いや、本当に複雑なんですが、

なぜかというと神経系のお話になってしまうためです

専門用語や医療的な用語がおおく、耳慣れないのです正直心が折れそうになります

そこで、今回はできるだけ専門用語を避けて、他より詳しくそして簡単に説明しようという試みで書いてみました

慢性痛になると体はどうなる

筋肉などの組織の変化

ケガをすると、私たちの身体は修復力を発揮します。

ところが、傷が深かったり、何度も繰り返し傷を作っている場所だとケガが回復するときに新しい問題が発生してしまうのです。

それは組織が固くなってしまうということです

この「固くなった組織」が、痛みの原因となってしまいます

「固くなった組織」は瘢痕化するのですが、瘢痕組織の中には、神経ペプチドやサイトカインなどの特定の物質が大量に存在します。これらの物質は、これはいわゆる「痛みのスイッチ」のようなもの。そして、瘢痕が大きくなると、ヒスタミンやセロトニンなどの物質も増え、これらも痛みをさらに加速させるのです。

具体的に言えば、次のようなメカニズムです:

  • 組織が硬くなり、痛み物質が増加
    組織が硬くなることで、痛みを引き起こす物質が増えます。この物質は、感覚神経に刺激を与え、痛みを感じやすくします。
  • 痛みの悪化
    傷がなおってくる過程で瘢痕が形成されます。この瘢痕内には、痛みの要因となる物質があつまり、痛みを悪化させます

このように「固くなった組織」が痛みの元凶となる仕組みは、火をおこす燃料が蓄積されているような状態です

火をつけるためには燃料が必要なわけですが、それと同じように痛みの燃料が筋肉に貯まっていくイメージです

痛みの燃料があふれてるからすぐに火がついてしまうのですね

例えばマッサージをしている人ならわかるところですが、痛いところは触ると固いですよね、逆に、柔らかい筋肉は痛みを感じにくいです。それもこの組織の変化と同じ現象といえるでしょう。

脊髄の影響(自律神経系への影響)

脊髄は脳に痛みを伝えるところでしたね。もちろん慢性痛でも痛みを伝える役割はおなじです。

ただし、ここでも神経の変容が起こります。

通常は刺激に対して過敏に反応しないように調整されていますが、慢性的な痛みがある場合、神経は過敏になりわずかな刺激でも痛みを感じやすくなります。この神経の過敏さが、自発的な痛みを引き起こします。

今までだったらむしするレベルの痛み、例えばねこぱんちレベルの痛みでも激痛レベルになるということです。

ねこぱんちだと結構痛そうですか?

アンパンマンで例えてみましょう。そう例えば、メロンパンナちゃんのメロメロパンチをくらったとします。本来だったらメロメロになるところですが、そんなメロメロパンチでさえ痛みに変わってしまうのです

という感じで、痛みが慢性化することで今までだったら感じない小さな刺激でも敏感に感じとって痛く感じてしまうというわけです

痛みを感じるのは脳です

が、慢性化した痛みになると脳の中にも変化があります

急性痛で痛みを感じてた部分の活動が低下するのです

脊髄や筋組織と同じで活性化しそうなものですが、低下してしまうんですね。

それでは解説します。

脳の中には、情報を処理し、感覚を制御するための特別な場所があります。その中でも、痛みの情報を扱う場所が「視床」と呼ばれています。
視床は、私たちが感じる痛みに大きな影響を与える場所なんです。

視床にはいくつかの部分がありますが、特に「外側脊髄視床路(がいそくせきずいししょうろ)」と「前脊髄視床路(ぜんせきずいししょうろ)」と呼ばれる部分が痛みに関与しているといわれています。

※これだととっつきにくいので、ここでは前者(外側脊髄視床路)を田中さん、後者(前脊髄視床路)を佐藤さんと呼んでいきます

田中さん…皮膚や内臓、筋肉、関節などからの感覚情報を処理

痛みに関連する情報を送る役割を果たしています。

佐藤さん…感情や情動に関連する情報を扱います。
(つまり、視床は痛みの情報を受け取るだけでなく、感情にも影響を与える場所ということです)

そして慢性痛の場合は視床の働きが変わってくるのです

急な痛み、つまり急性痛の場合は視床は活動が増えるのですが、

慢性的な痛みが続くと、視床の一部では活動が低下してしまうのです。

筋組織や脊髄では痛みが活性化する変化だったわけですが、

脳(視床)はその逆。活動が低下するのです

なぜ活動が低下するのかは、

「痛みを抑える働きが活発になっている」、「わずかな痛みにも反応するようになっているから視床の働きを活発化する必要はない」

などの可能性があると言われています。

「活動が低下するなら痛みは感じないはずでは…?」という疑問も浮かんできますが、

脳のほかの場所が活性化するのです

それが、感情や記憶をつかさどる、
「前頭前野」というところ。額のすぐ後ろにあります

おもに記憶や感情を担当している部分で、精神活動をつかさどっています

つまり、慢性的な痛みが続くと活発化する部分が(急性痛とは)変わり脳の働きが変化し、

それが痛みの感じかたに影響を与えるというわけです。

※しかし、ちなみに付け加えると、慢性痛は1種類だけではありません

例えば階段に登ったり走ったりするときに痛む動作時痛や、何かカラダを動かしてるわけではないのに痛む自発痛です。

動作時痛では急性痛と同じように視床が活発化しますが、自発痛の場合は前頭前野が活発化します

Point→

・組織がかたくなり、「発痛物質」が増える

・痛みを感じる感度が上がる

・記憶や感情の部分が活発化、痛みの感じかたが変わる(※自発痛の場合

ストレスやうつが痛みの原因?

「病は気から」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは科学的に根拠がある重要な考え方です。なぜなら、痛みを感じる部分は感情をつかさどる部分と同じだからです

例えば、楽しいことに夢中になっていたり、緊張しているとき、痛みを感じにくいことがあります。それは感情が優先され、痛みの感知が後回しにされるからなんです。

面白いことに、痛みは文化や国によっても異なることがあります。例えば、むち打ちの痛みは日本では障害として認識されていますが、ドイツではそうではなくむちうちという概念がないのです。それにともない、痛みの持続性にも違いがあるそうです。

これらのことから慢性痛における痛みが感情からも影響を受けることがわかります

例えば、

・痛そうな画像を見たとき

・膝痛の人が階段を登っている映像を見たとき

などを痛そうと「感じる」だけで、脳の中で「痛そう」と感じる部分が活発化して、実際に痛みを感じるようになることがわかっています。

ちなみに私は左肩に慢性化した痛みをかかえているのでこの文章を書いているときにずっと痛く、実感しているところです

だから、「病は気から」という言葉は、決してただの言い伝えじゃなくちゃんと科学的な根拠があるというわけです。

感情と痛みは実はめっちゃ関係があるのですね

けっきょく慢性痛はなぜ温めるのか

今までの説明のように慢性痛では筋組織がかたくなり、痛みをうけ取る神経が活発化します

「痛みを感じること」を担当している神経が活発化するのは交感神経が過度にはたらいていることが原因です

つまりどうすればいいのかというと、温めること。

このとき冷やしてしまうと交感神経が活発になってしまいます

だから慢性痛の場合はあたためるのがいいのです

あたためることで…

筋肉の緊張緩和

あたためることが痛みの軽減になる最もたいせつな要因の一つは、血液の流れを良くすることです。

つまり温めることです

温かさを感じると、血管が拡張し、血液のながれが良くなります。これにより、体内のたいせつな栄養や酸素が効率的に組織にはこばれ、痛みをひき起こす物質が効果的に除去されます。

血流がスムーズになることで、筋肉にたまった痛み物質が効率的に排出されるのです。これにより、痛みの発生源がへり、痛みがやわらぎます

副交感神経を活発化する

ここで登場するのが、交感神経と副交感神経です。交感神経は「戦闘モード」を司る神経で、緊張やストレスと関連しています。一方、副交感神経は「リラックスモード」を担当し、体をリラックスさせる役割があります。

痛みが感じやすくなっている状態は交感神経が活発化しているということです。つまり交感神経の活動を抑えることで痛みの感じ方を抑えることができます。

温かめることで副交感神経の働きが促進され結果として、痛みを感じチカラが落ちることで痛みがやわらぐのです

大事なのは「筋組織をやわらかくする」そして「交感神経の働きをおさえる」ことです

動作時痛(動作をしたときに痛むいたみ)

動作時痛も組織変化してしまったらその部分は治りませんが、

動作時痛の有効なアプローチとしては姿勢を変えるという方法が考えられます

どういうことかというと、痛い部分の負担を減らすのです

それには姿勢を変えることが近道です

姿勢と慢性痛の関係は深いものがあります。

姿勢を改善することで、痛みの発生源に対する負担を軽減できるのです。

姿勢の変化により、身体の使い方が変わり、それにともなう負担が軽減されるというわけです

おわりに

ときに怪我や痛みが起きたとき、「ちゃんと治そう」と言われます。

その理由は組織が変わってしまうからなんです。つまり、慢性化する前にしっかりなおすことが大切です。

慢性化とは、組織が変わってしまうことを指します。

組織が変わると、もう元に戻すことは難しいです。例えば、ゆで卵を作ったとしましょう。ゆで卵になったら、もう生卵には戻せないでしょう?体も同じなんです。一度組織が変わってしまうと、元の状態に戻すのは難しいんです。

ぎっくり腰や腱鞘炎など、一度痛みがなくなると「治った!」と思いがちですが、じつは身体の中ではまだ炎症が続いていることはよくがあります。そのため、時間をかけて組織が変わり、最終的には慢性痛につながってしまうのです

だからこそ、慢性化する前にしっかりちゃんと治そうねとういうお話です